“コスプレまちおこし”に異状あり? ファンの選択眼厳しく試行錯誤
アニメやゲームなどのキャラクターになりきるコスプレイベントを、まちおこしや観光客誘致に活用する取り組みが岡山県内で増えている。背景には、参加者が会員制交流サイト(SNS)を通じて風景や建物などロケーションの良さを発信したり、撮影のためにリピーターになってくれたりすることへの期待がある。ただ、コスプレファンの選択眼は厳しく、主催者のもくろみ通りにはならないケースも少なくない。県内の事情を探った。
「そのポーズいい」「次は庭で撮ろう」ー。ゲームや映画で人気の「刀剣乱舞」のキャラクターになったコスプレイヤーが、思い思いのポーズを決め、カメラのシャッターを切る。観光施設・いかしの舎(早島町)で6月15日に開かれた撮影イベントだ。
同町が「コスプレの聖地」としてアピールするいかしの舎は、明治末期の商家を改装した施設で、「和の雰囲気でいい写真が撮れる」と以前からコスプレーヤーが訪れるスポットになっている。この日は県内外の7人が参加。会社の同僚と参加した広島市の女性(29)=広島市=は「初めて来たが、とても古風な感じがいい。撮った写真を早速SNSにアップしたい」と笑顔を見せた。
SNSで評判
県内ではここ数年、コスプレイベントが増えている。古くは、横溝正史ファンが小説の登場人物に扮(ふん)して、倉敷市真備町地区の小説ゆかりの地を巡る「1000人の金田一耕助」が2009年から行われているほか、凱旋門(がいせんもん)のような西洋風の建築物や大自然の中で撮影ができる美作市のベルピール自然公園、矢掛町や津山市など古い町並みを生かした取り組みが目立つ。
笠岡諸島を舞台に17年秋から始まった「島コス笠岡」は、自然豊かな島ならではの撮影ができるとあって、人気を集めている。コスプレの撮影も手掛けるカメラマン・ぱんぬさん(36)=笠岡市=が始めた。春は白石島、秋には北木島で開き、各回約150人が島に渡っている。
ツアーは1泊2日。石切り場や神社、砂浜、竹林、岩場などさまざまなシチュエーションで、昼夜を問わず撮影できることが最大の売りだ。海に沈む夕日などロケーションの良さに加え、夜は炎の特殊効果もオプションで用意するなど、オリジナリティーあふれる写真が撮れる。ツイッターには、「#島コス笠岡」のハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿が相次ぎ、評判を呼んでいる。参加経験のある女性(26)=福山市=は「ここでしかできない撮影ができる。参加者と島民しかいないので、人目を気にしないのもいい」と満足げだ。
ぱんぬさんは「ツイッターの拡散力は絶大。しかし来た人が120%満足してくれないと、次は来てくれないし、SNSにも書き込んでくれない。初めて参加する人の満足度を上げるように努力して、200人が集まるイベントに成長させたい」と夢を膨らませる。
玄人好みに
広島県の女性コスプレーヤー(31)は「最近は『合わせ』と呼ばれる個人グループの撮影が主流。イベントに行くにしても、普段は入れないとか、そこでしか撮れない場所を求めて全国各地を探す人が多い」と明かす。玄人好みのイベントや場所が選ばれる傾向があるというのだ。
コスプレイベントサイトを見ると、週末ごとに全国各地の撮影会の情報が並ぶ。県内でイベントを主催した経験者は「コスプレイベントだから20~30人は集まると思ったら大間違い。集客のノウハウがないまま手を出すとやけどする」と指摘する。
観光PRに期待
SNSで趣ある町並みもPRしてもらおうと高梁市吹屋地区は今年2月、撮影会を初開催した。国の重要伝統的建造物群保存地区で、赤色顔料・ベンガラ色の古い家屋が建ち並ぶ。以前からコスプレ撮影の問い合わせがあり、個別で対応していたが、イベントをすることで大々的にアピールするのが狙いだった。
当日は広島、福岡県などから25人が参加。和風の雰囲気に合わせて、刀剣乱舞などのコスプレをはじめ、忍者や武士など思い思いの衣装を着て、雪化粧した古民家の軒下などでポーズをとった。JR備中高梁駅から会場までは、市所有のボンネットバスを無料運行し、雰囲気作りや来場者の足の確保にも配慮した。主催した高梁市成羽町観光協会吹屋支部の江草麻里さんは「吹屋への訪問が初めての人が多いようだった。イベントがない冬に観光客を呼び込むノウハウは得られた」と手応えを口にする。
同時開催のイベントを含めて、経済産業省の商店街災害復旧等事業(商店街にぎわい創出事業)の補助金100万円を活用。コスプレイベントを手掛ける広島の会社にプロデュースを依頼した。江草さんは「事業費やスタッフがかなり必要なため、今後は未定。愛好者グループにイベントを開いてもらう方向も探っていきたい」と試行錯誤を続ける。
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出典:山陽新聞digital